コマ割は宇宙みたいなもんでめちゃくちゃ難しいけど面白いよという話

はじめに

漫画というコンテンツが持つ特徴は、次の2つです。

  1. 唯一無二の構成要素「コマ割」がある
  2. 多くの構成要素が複雑に絡み合う

絵やストーリーについては、それぞれ脚本術・作画技術に関する書籍に詳しいです。つまり、他のコンテンツにおいて十分に研究されているため、そちらで蓄積されたノウハウを勉強すればなんとかなります。
しかし、他のコンテンツにはコマ割そのものが無いため、漫画以外のコンテンツに教示を願うことは叶いません。にも拘わらず、漫画業界においてコマ割分野の研究はそれほど進んでいないように思えます。

従って、上記の2特徴は次のような「漫画というコンテンツの難しさ」に繋がっていきます。

  • コマ割とかいうよくわからない構成要素が他の構成要素と絡み合って余計に訳わからんくなる

地獄ですね。

ということで今回は、漫画にとってコマ割とはどういう存在なのか、そしてコマ割理論における根本的な考え方にはどのようなものがあるのか、これらについて考察・整理していきます。

目次

エンタメコンテンツは「物理的な切れ目」との戦いである

まずは、漫画だけに限定しない、エンタメコンテンツ全般に関する話題を扱っていきます。

エンタメコンテンツは 入れて・出させない

エンタメコンテンツは、お客さんを「入れて・出させない」ようにするためにはどうすればいいか、というアイデアの結晶です。
「入れる」とは? 「出させない」とは? 1つずつ説明していきます。

1. 「入れる」

「入れる」とは、お客さんにコンテンツの存在を知って頂く・ハマって頂くステップのことを指しています。
以前「漫画の構成要素には『深さ』って概念があるんじゃあないかという話」でまとめた「浅い構成要素」を洗練することだけでなく、SNS等を活用したコマーシャルを行うこともこれにあたります。後者の作業は、漫画制作シーンにおいては雑誌編集部の方に100%お願いするのがスタンダードでしたが、最近は作家自身もコマーシャルを行わねばならなくなってきたといえます。「入れる」作業周りの傾向は、こんな感じで変わりつつあるのです。

  • 作家としての在り方が多様化した
    • かつては雑誌で連載を持っている商業作家だけがプロだった
    • 今日では、SNSの台頭・作品掲載プラットフォームの増加等に起因して、プロ・アマの境界線が曖昧に
    • そのため、雑誌編集部のお世話にならない活動形式を取る作家が増えた
  • 商業作家の中にも、読者とのコミュニケーション等を目的としてSNSを利用する人が増えてきた

上記のような変化によって、現代の作家には「入れる」作業の研究・分析をする必要が出てきました。今回のコマ割の話からは外れるネタなのでそこまで突っ込みませんが。
どのような漫画作品がTwitter上でバズりやすいか、という記事はその内書くかもしれませんし、書かないかもしれません。

2. 「出させない」

折角「入れる」ことに成功しても、すぐに出ていかれてしまったら意味が無いです。入ってきたお客さんをどうにかして囲い込んで、「出させない」ようにする必要があります。


まずは、お客さんがいつ出ていってしまうのかを分析しましょう。
お客さんが出ていってしまう一番のタイミングは、コンテンツの物理的な切れ目です。「物理的な切れ目」の具体例には、以下のようなものがあります。

  1. テレビ番組
    • 細かい粒度でいうとCMのタイミング
      • A/Bパートの途中で出ていく(視聴をやめる)ことは滅多にありません
      • まぁ、よっぽど内容が劣悪だったらその限りではないでしょうが……
    • 粗い粒度でいうと今週分が終わったタイミング
  2. 小説
    • 細かい粒度でいうと1P読み終わったタイミング
    • 中程度の粒度でいうと1章読み終わったタイミング
    • 粗い粒度でいうと1冊読み終わったタイミング
  3. 寄席・劇場
    • ある演者の根多・ネタが終わったタイミング
  4. YouTubeNETFLIXなど、動画コンテンツのプラットフォーム
    • ある動画が終わったタイミング

上記の例を見て、「確かに自分がこれらのコンテンツから中座するときはそういうタイミングだなぁ」と思っていただけましたかね、どうでしょう。
お客さんは、コンテンツが物理的に途切れているタイミングで出ていってしまいがちなのです。

物理的な切れ目があるからお客さんは出ていってしまうので、まず第一に考えるべき解決策は「物理的な切れ目を作らない」です。
例えばテレビ番組でいうと、CMをやらないようにする? 民放においては、スポンサーの関係でそれは難しいでしょう。「今週分終了」の切れ目を無くすということは無限にその番組を流すということになります。これも無理ですね。
他のコンテンツについても、「物理的な切れ目ゼロ」は実現可能性が低そうです。我々エンタメコンテンツクリエイターは、この物理的な切れ目の前には無力なのでしょうか。


いえいえ、そんなことありません。本節の初めで書きましたが、エンタメコンテンツは「出させない」ようにするアイデアの結晶です。既存のコンテンツには、このような物理的切れ目でお客さんが出ていってしまわないようにする工夫が施されているのです。その工夫とは、「物理的な切れ目を精神的に繋ぐ」、です。崖やクレバスのような切れ目に、橋を架けるイメージです。
「精神的に繋ぐ」手法は大きく分けて3つあります。1つずつ具体的に説明していきますので、それぞれの手法について・そして精神的に繋ぐということについて、理解していただければと思います。

i. 「完成度を上げる」

これは最もシンプルかつ最も難しい手法ですね。要するに、「物理的切れ目の前が面白かったら、切れ目後も面白いだろうと期待してもらえる。そのため、出ていかれない」ということです。
それはそう。当たり前体操。何の参考にもならない。もう次いきましょう。

ii.「興味を惹く」

テレビ番組を例に説明してみます。
テレビ番組における切れ目の1つはCMです。CMの直前には「あ、あれは!?」とか「このあと衝撃の展開が……!? チャンネルはそのままで!」とかいうシーン・カットがほとんどの番組で入っています。そうすることで、お客さんに「CM後はどうなるのかな」と思わせ、興味を惹けます。
お客さんの精神は、CM後にフォーカスされているのです。つまり、精神的に繋がっている状態なのです。今週分が終わったときにも、「来週のサザエさんは」よろしく次回予告をする番組って多いですよね。これも同様です。

小説の章終わりも物理的な切れ目といえますが、こちらもテレビ番組と同じで、興味を惹いて精神的に繋いでいるものが多いと思います。

このように「興味を惹く」ことで精神的に繋げれば、物理的な切れ目で出ていってしまうお客さんの数は減らせるのです。

iii.「切れ目を隠す」

「興味を惹く」は「物理的に切れているなら、精神を切れ目の先にフォーカスさせて、精神的に繋げばいいじゃない」という話でしたが、この「切れ目を隠す」は「物理的に切れていても、お客さんがそのことに気が付かなければ出ていかないよね」という発想に基づく工夫です。

例えば寄席。ある演者の根多が終わったらお囃子が流れます。もしもお囃子が無くてシーンとしていたら、お客さんは切れ目を強く感じてしまい、その結果寄席から出ていってしまうかもしれません。お囃子は、物理的な切れ目を隠す役割を担っているのです。
また、YouTubeには、ある動画を視聴終了したときに関連動画を自動で再生する機能が実装されていますね。あの機能があると、いつまでーも動画を見続けてしまいませんか。自動再生機能は、物理的な切れ目を隠すための機能であり、我々はこの機能のはたらきによって切れ目に気付けず、永遠に動画を視聴してしまうのです。

つまり、本当は物理的に切れているんだけど、様々な工夫によって精神的に繋いで、物理的切れ目を意識させない。これが「切れ目を隠す」ということなのです。


さて、「物理的な切れ目を精神的に繋ぐ」の意味、何となくでも理解していただけたでしょうか。

以上が「入れて・出させない」の簡単な説明です。
コマーシャリングや「掴み」を考えてお客さんを入れる。しかし、エンタメコンテンツの都合上どうしてもできてしまう物理的切れ目で、お客さんは出ていってしまう。そこで、その切れ目に精神的な橋を架け繋げることで出させないようにする。この「入れて・出させない」がポイントなのです。

漫画の物理的切れ目とは?

先ほど説明した物理的な切れ目の具体例には、いくつかの粒度別に説明していたものがありました。漫画についても、粒度別に見ていくことにしましょう。漫画の物理的な切れ目は、粒度が粗い順にいうと次のようになっています。

  1. 単行本ごとの切れ目
  2. 各話の切れ目
  3. 見開きページごとの切れ目
  4. 1コマごとの切れ目

1~3の切れ目について、無くす選択肢は不可能であることを確認してください。一番最初に考えるべきはそこです。(「1コマごとの切れ目」については後で詳細に考えていきます。)

そのため既存の作品では、毎巻・毎話のラストは次巻・次話が気になるようになっています。「興味を惹く」ことで精神的に繋いでいるのです。また、当然のこととして、「完成度を上げる」精神的な繋ぎ方も、毎巻・毎話で実施されています。

加えて、所謂「めくってドン」は、見開きページごとの切れ目を「興味を惹く」ことで精神的に繋ぐ手法といえます。
「めくってドン」を簡単に説明しましょう。まず、見開きページにおける左下のコマで、「お、お前は!」とか「ゴムゴムの~~」とかいうシーンを描き、お客さんが思わずページをめくってしまうようにします。そして、ページをめくった先に「ドン」とインパクトのある見せ場シーンを用意しておくのです。

  • 「お、お前は!」 → ぺらっ → 「あの時死んだはずの!」
  • 「ゴムゴムの~~」 → ぺらっ → 「バズーカ!!!」

これが「めくってドン」です。呼び方には多少の揺れ・流儀があるでしょうが、漫画制作者にとっての基本技術だと思います。

「めくってドン」によって、お客さんは、面白い・ 次のシーンも読みたいなどといった感想を抱きます。物理的な切れ目で出ていかなかったわけです。エンタメコンテンツの勝利ですね。しかし、すぐに次の見開きページが終わってしまい、また切れ目が来ます。次はどうやって興味を惹こう? そういった戦いの繰り返しなのです。

他の切れ目は無くせない。ではコマ割は?

さて、問題は「1コマごとの切れ目」ですね。まず考えるべきは、「この切れ目を無くせないか」です。
コマ割、辞めませんか? 考えるの大変で面倒だし、でもお客さんは絵とか話とかに注目しがちでコマ割って評価されないからコスパ悪いし、その上物理的な切れ目まで作ってお客さんが出ていく一因になるなんて。なんのためにコイツ存在するんだ。害悪。まぢ無理リスカしよ。

まぁでも、漫画の長い歴史の中でコマ割が産まれ、今日まで残っているということは、何らかの有用性があるのでしょう。コマ割の何が嬉しいのか・コマ割が無いと何が困るのか、少し考えてみましょう。

お話を情報の連なりと捉えると、コマ割が無い漫画作品とは、1つのページに1つの情報しか無い作品です。週刊連載の場合1話あたり約20Pですから、お客さんは1週間待ったのにそのお話に関する情報を20個しか得られないということになります。そして作者は、20個の情報の中で、次のことを描かなくてはいけません。

  1. 前回の続き
    • 各話の切れ目を精神的に繋ぐために、毎話のラストは「イイところ」で終わっているはず
  2. 今回の内容
  3. 次回へのフリ

たった20個の情報でこれだけのことを描くのは相当の難易度です。

でも、どうにかしてお客さんを満足させないといけません。どうしましょう?
思いつく解決策は、「1Pあたりの情報量を多くする」ことです。1Pに2個も3個も情報を詰め込めば、お客さんを満足させることがもう少し簡単になるかもしれません。しかし、ただ単に情報を詰め込むと見づらいだけです。可能な限り「見やすく詰め込む」という矛盾を実現するため、うまい詰め込み方を考える必要があります。
情報には流れ・順番がありますから、吹き出しや絵をこの順番で見てほしいというメッセージを込めねばなりません。吹き出しに数字を書く? お客さんにとってノイズとなる余計なものは追加したくないですね。線とか引きます? 数字よりは線の方が、読んでいて邪魔にならないはずです。例えば真ん中に横線を引けば、きっとお客さんは上→下の順番で読んでくれるでしょう。これで、ノイズを増やすことなく、1Pに情報を2つ入れることができるようになりました。さらに縦線も引いちゃえば、1Pに入れられる情報量が4つに増えますね。

あれ、これコマ割そのものでは……。

コマ割があると何が嬉しいのか、まとめるとこういうことです。

  1. コマ割が無い場合、1話あたりに詰め込める情報量が少なくなる
    • お客さんは、情報量の観点で満足しない
  2. コマ割無しに情報を詰め込むと、見づらい
    • お客さんは、情報量の観点では満足しているが、見やすさの観点で満足しない
  3. コマ割技術を活用すれば、「見やすく詰め込む」という矛盾を実現できるようになる

つまり、コマ割とは、情報を見やすく詰め込むためのページデザイン技法なのです。漫画にコマ割は必要不可欠であり、コマ割こそが漫画表現における最大の独自性といえます。コスパ悪いとか言わずに研究しましょう。

コマ割の物理的切れ目を精神的に繋ぐ

我々に大いなる恵みを与えてくれるコマ割ですが、一方で、物理的な切れ目を作ってしまうという負の側面もあります。コマの枠線は「物理的な切れ目」です。つまり、あるコマを読み終わったタイミングで、お客さんは心の中で「次のコマを読むか否か」ジャッジし、そのジャッジを通過できなかった場合「出ていかれて」しまうわけです。

どうやってこの問題を解決しましょうか。
本記事の初めで、「他のエンタメコンテンツにコマ割は存在しないため、漫画以外のコンテンツにノウハウを教示してもらえない」と述べました。それは事実です。しかし、コマ割における実質的な問題は「物理的な切れ目ができてしまう」点であり、この問題の解決策は他コンテンツからたくさん吸収することができます。そして、他コンテンツにおける解決策の分析は、ここまでで既に行ってきました。

エンタメコンテンツの最重要事項は、お客さんを「入れて・出させない」ことです。お客さんが出ていってしまう「物理的な切れ目」は、崖やクレバスに橋を架けるが如く、精神的に繋ぐことで乗り越えることができます。具体的には、

  1. 完成度を上げる
  2. 興味を惹く
  3. 切れ目を隠す

の3種類の手法があるんでしたね。
そして1, 2の手法は、コマ割よりももっと粒度が粗いレベル、つまり単行本レベル・1話レベル・見開きページレベルでは、実は漫画制作で取り入れられていました。

じゃあ、これらの手法を、コマ割の物理的切れ目問題を解決するために使えないか、考えてみましょう。

完成度を上げて繋ぐ

「前のコマが面白かった。次のコマも面白いはずだ。続きを読もう」
お客さんにそう思っていただくことで精神的に繋ごう、ということです。

この手法は、最も一般的な考え方です。多くのネーム描き・漫画描きが一番最初に考えるポイントだと思います。

この考え方に基づいて作られたコマは、「トリミングして1コマだけで見ても面白い」という特徴があります。
Twitterなんかで、「今週のこの作品はここが面白かった」などと、1コマだけをトリミングしてツイートしている人を見かけたことはありませんか*1。あるいは、人気な作品だったら「〇〇展」と題して個展が開かれることもあり、そこでは名シーンを1コマだけトリミングして展示されたりします。
このような、「1コマだけで見ても面白い・絵になる」という状態は、その1コマの完成度が高いということの証拠なのです。各コマの完成度が高いかどうか気になったら、ネームを全部コピー・プリントアウトして、1コマずつに切り分け、シャッフルしてみるといいかもしれません。全コマが最高に面白い! とはいかないでしょうが、まぁ3分の1ぐらい面白ければイイ感じだと思います。

興味を惹いて繋ぐ

ストーリー全体で「どうなるんだろう」「どういう意味だろう」と興味を惹こうという話は、巷に溢れていますが、「1コマ単位で興味を惹くように作る必要がある」と主張しているものはあまりないかもしれません。しかし重要なことです。

「1コマ単位で興味を惹く」ための具体的なテクニックを1つ紹介します。
冨樫義博大先生のHUNTER×HUNTERで頻繁に使われる「アクションとリアクションの順番を逆にする」手法は、かなり有効なテクニックです。
リアクションはre-actionなので、あるアクションに対する反応のことです。つまり、アクションの後にリアクションというのが普通です。しかし、HUNTER×HUNTERでは、リアクションを先に描きがちなのです。例えば、天空闘技場編でヒソカが自分の腕の切り口に手を突っ込むシーン。現実世界ならば、

  1. ヒソカが腕に手を突っ込む
  2. 観客がそれ見てビックリ

という流れで進んでいくはずですね。1がアクションで2がそれに対するリアクションです。しかし、HUNTER×HUNTERでは、この順番を逆にして

  1. 観客がビックリ
  2. ヒソカが腕に手を突っ込む

の順で描かれています。
これを読んだお客さんは、次のような心理状態になり、物理的な切れ目を1つ越えることができました。

  • (1を読んで)天空闘技場の観客たちは何にビックリしたんだろう
  • 次のコマを読んでみよう

アクションとリアクションの順番を逆にしてリアクションを先に描くということは、本質的には「問題提起・回答提示の順で描く」ということです。例えば、以下のような描写も同様に読者の興味を惹けるため有効であるといえます。

  1. キャラクターが突然撃たれる
    • 問題提起: 誰が撃ったのかな・どこから撃ったのかな
  2. 狙撃手の顔が描かれる
    • 回答提示: こいつが撃ちました
  3. 位置関係が描かれる
    • 回答提示: ここから撃ちました

リアクション・アクションの順、あるいは問題提起・回答提示の順で描くことで、1コマ単位でも興味を惹けるように工夫しましょう。

切れ目を隠して繋ぐ

コマ割の物理的な切れ目はコマの枠線なので、一番単純な切れ目の隠し方は、枠線を引かないことです。そもそも枠線を引かなくても読みやすいように吹き出し・キャラクターを配置したり、キャラクターの脚やゴンさんの髪の毛などによるぶち抜きでコマを割ったりすることは、切れ目を隠す有効な手段です。普通に枠線を引くよりも、物理的な切れ目を意識されないと思います。
あるいは、キャラをコマに跨らせる様に描くことも有効です。1人のキャラクターがある程度長い台詞を話しているシーンでは、複数のコマにキャラを跨らせると見やすくなります。

切れ目をうまく隠している漫画作品は、「1コマごとの完成度を上げ」た漫画作品と異なり、1コマだけにトリミングできない、という特徴があります。HUNTER×HUNTERや呪術廻戦は、頻繁に「切れ目を隠す」手法を取っている作品です。参考にしてみてください。

まとめ

ここまでの一連の説明が、コマ割を考える時の思考回路、すなわちコマ割理論における根本的な考え方なのです。まとめてみます。

  • コマ割は情報を見やすく詰め込むためのページデザイン手法
    • 限られたページ数でお客さんを満足させるために必要不可欠
  • 一方で、コマ割はお客さんの流出原因となる「物理的な切れ目」を作ってしまう
  • そこで、他コンテンツで採用されている「物理的な切れ目を精神的に繋ぐ」手法をコマ割にも流用しよう
    1. 完成度を上げる
    2. 興味を惹く
    3. 切れ目を隠す

コマ割に「銀の弾丸」は無い

銀の弾丸」は、オオカミ男や悪魔を撃退するために使われます。ソフトウェア工学界隈では、特効薬なんて存在しないという意味でこのような言い回しが使われます。

ソフトウェアだけでなく、コマ割にも特効薬、すなわち「こうすればいつもうまくいく」という鉄板の手法はないのです。
具体的な鉄板手法が無い分、上記のような、コマ割理論における原理原則をしっかりと理解した上で、各シーンにピッタリなコマ割を考えていく必要があります。

ネームの校正・コマ割のコンサルタントに関する依頼は、浮曇想作所で随時受け付けています。興味ある方はご相談ください。

終わりに

漫画描きの主な興味の対象はお話作りと作画作業であり、コマ割は業界全体として軽視されているといえます。しかし、漫画表現の最大の独自性はコマ割であり、ここを追求することは、他コンテンツとの差別化に繋がる、非常に大切なことだと考えています。
本記事に関するご質問などは、私が所属する個人事業所 浮曇想作所の質問箱に投げていただくのが一番気軽かなと思います。もちろん、ホームページに記載されているメールアドレスからコンタクトを取っていただいても構いません。
浮曇想作所を、今後ともよろしくお願い申し上げます。

文責: はんすおい
協力: 浮曇非路 (Special thx: ぶんちょう)

*1:これに関しては、著作権的にどうなんだという話題もありますが……。私個人の見解は「数コマ程度だったら著作物として認められないレベルなのでセーフ。でも作者さんがやめろと言ったらやめるべき」です。