桐生ココはすげーんだぜという話をする

桐生ココが引退する。

ホロライブ関係者たちは「卒業」という言葉を使うが、私は「引退」と言わせていただく。卒業とは、例えば単位を取り終わった・課程を修了したなど、やり切った場合に使う言葉だと思う。
桐生ココの成功はラッキーパンチではなく、彼女の努力・才能・戦略の結晶だと思っている。まだまだ、このVの世界を優雅に飛び回ってくれたと思えてならない。ゆえに「卒業」と言いたくないのだ。

そこで、この稀代の秀才エンターテイナーがいかに素晴らしかったか、特に彼女の配信戦略について、一個人の意見としてなんだかんだと述べさせていただく。


桐生ココの配信構成を端的に表現するとこんな感じである。

  • 長寿企画 + ゲーム実況

ゲーム実況としては、ホロだけでなくV全体にブームを巻き起こしたARC実況、最終的に出演声優さんにまで認知された龍が如く実況あたりが代表的である。また、モンハンのような、その時流行っているゲームの実況もしっかり行っていた。

しかしゲーム実況は、クリアしてしまったりやり尽くしてしまったりすると、次のネタを探さなければいけなくなる。ゲーム実況だけで第一線で活躍し続けるのは、常に「次はどうしよう」という思いが付きまとうし、非常に難しいことだと思う。

そこで、桐生ココは主軸にあさココ・Reddit Shitpost Reviewといった長寿企画を据え、安定した人気を得ることに成功した。これらの企画は本質的には同一であり、桐生ココのお家芸といえる。

あさココLIVE

桐生ココの代表作「あさココ」は、大量にある「ホロライブの前日の配信」から面白いシーンを抽出し、わかりやすくまとめ、面白く解説する企画である。やれば必ずトレンド入りした、といっても過言ではないほどの超人気企画であった。

あさココの功績は主に2つ。海外ニキの取り込みに成功したという点と、ホロメン間の導線を作ったという点である。

前者に関しては様々な人に言及されているため、割愛する。非常に素晴らしい功績であることは言わずもがなである。

後者をより詳細に表現すると、単推し勢が多かった(ように記憶している)当時のファンたちに、「あさココで紹介されてたヤツをアーカイブで見てみるか」と思わせ、箱推しを増加させた、という功績である。
つまり、あさココ(→わためのうた)→あさココで興味を持ったアーカイブを日中に視聴→夜にメイン推しの配信をリアタイ(→面白いシーンがあれば #あさココリーク でツイート)→あさココ……という流れを作ったのである。ホロライブ全体の活性化に寄与したといえる。

また、あさココについて「朝にやるという点が画期的だった」と言われているが、私にはこの配信時間帯は必然であったように思える。日中や夜では視聴者たちがアーカイブを見れないため、ホロ内に先述の導線は作れない。視聴者たちのカスタマージャーニーマップのようなものを考えると、朝にやるのがベストだという帰結になる。
一方で、配信時間が朝なので、他のホロメンとコラボなどはできないという欠点が存在する。桐生ココもそのことには気が付いていたと見えて、他のメンバーとはCMと称した動画形式にて共演する工夫がなされていた。

また、ゲーム実況と決定的に異なるのは、基本的にネタが尽きない点にある。あさココは、半永久的に続けることができるコンテンツなのである。
しかし、「前日の配信」群から数十秒レベルの面白いシーンを探す作業の大変さははかりしれない。ホロライブ全体の発展を願ってあさココを配信し続けた桐生ココ氏の努力は称賛に値する。

もちろん、あさココの成功は桐生ココ自身のセンスあってのものである。彼女の非凡なセンスがうかがえる回として、「大空スバルチン凸被害事件」を扱った回を挙げたい。(この回)(スペースが余ったらスバルを入れときゃいいと海外ニキが言っていた)
一般的な配信者ならば、「こういうことがあったらしい」「チン凸はダメだぞわかったかバカども」程度でクローズとなる話題であろう。しかし桐生ココは、「海外で"野郎がチンコを見せたがる理由"という論文が書かれるほど、世界的にも問題視されていること」という広げ方をした。そんな展開を作れる配信者・切り抜き師が他に居るだろうか。

聴診器でキャンタマの音を聴きたがる(この回)などのイカレっぷり(誉め言葉)ばかりが目立つが、彼女の真骨頂は上記のような話題のチョイスセンスにあると思っている。

Reddit Shitpost Review

さて、そんなマンモスコンテンツあさココの他に彼女が生んだスーパー企画、それがReddit Shitpost Reviewだ。

これは、海外サイトReddit上に大量にある「クソコラ」から面白い作品を抽出し、わかりやすくまとめ、面白く解説する企画である。つまり、内容の本質はあさココと同様で、桐生ココの得意技なのである。
こちらもあさココと同様、基本的にネタが尽きないため、半永久的に続けることができる。

あさココと異なる点はいくつかある。
第一に、アーカイブへの導線は生まない。これにより、朝以外の時間帯にも配信できる内容となった。(しかし、他ホロメンへの導線は生むので、やはりホロライブ全体の活性化に寄与していた。)結果、朝以外の時間帯に配信することで、他のメンバーとのコラボ形式で提供できるようになった。「次のゲストは誰じゃろな?」まで視聴者のひとつの楽しみにしてしまうあたり、彼女の手腕がうかがえる。
第二に、事前準備の労力が違う。クソコラのほとんどは画像であり、「前日の配信」をチェックするのよりは収集が楽なはずである。海外のスラング知識を要するが、USDA出身のオタクである桐生ココなら問題ない。
総括するとReddit Shitpost Reviewは、配信内容としては桐生ココの十八番であるが、あさココよりも事前準備の労力がやや軽くコラボも可能な、あさココの進化版だったのである。


このように桐生ココは、安定して提供できるコンテンツと、不安定ではあるがその瞬間瞬間のブームに乗れるゲーム実況的コンテンツとの両軸で活動しており、前者に関しては見事なグレードアップを見せていた。
彼女のバズりは、決してラッキーパンチではなく、努力・才能・戦略の結晶なのである。実際、あさココからReddit Shitpost Reviewへのレベルアップは見事なものであった。もし引退しなければ、ここからさらなる進化を遂げてくれただろうなどと夢想すると、非常に無念である。


桐生ココは、天才というよりは秀才という表現が似合うと思う。
思い出しても見てほしい、三期生の3Dお披露目配信時、彼女たちはまだチャンネル登録者数10万人程度だった。VTuberはいわばその程度のコンテンツだったのである。それが今では、初配信前に10万人を突破する事例も出てきた。明らかにコンテンツ自体の知名度が上がっている。金盾保持者が1つの事務所から20人も出るなんて、当時の視聴者たちは予想できただろうか。
VTuberが世界規模で人気になったきっかけの1つに、この「伝説の龍」の存在があることは確かだろう。ホロライブにとってだけではなく、VTuber業界全体にとっての功労者である彼女に、「行かないでほしい」「どうか元気で幸せに」と、それ以外の声が流れ去ってしまうほど何回も言いたいと思う。これら2つの感情は矛盾しない。

最後に、みんな大好きケツソムリエニキことKoefficientさんのコメントを紹介する。ファンのあるべき姿について見事に言語化されているので、ぜひチェックしていただきたい。

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翻訳・切り抜きはみのむし氏である。両名には今後とも無理のない範囲で活躍していただきたいと思う。


さらばだ、稀代の秀才エンターテイナー桐生ココ。愛してんで! (しかしガチ恋ではない)